「派遣の立場は弱い」という思い込みの根本的な原因は、正社員に適用される社会保険や福利厚生などが、
派遣社員には適用されないと誤解している人が多いからではないでしょうか。
そんなことはありません。
正社員も派遣社員も、法律的には労働者であることに変わりありません。
正社員に労働基準法が適用されるように、派遣社員にもまた適用されます。
つまり法律で定められて正社員に認められていることのほとんどが、派遣社員にもちゃんと認められています。
たとえば、働く人にとってもっとも気になるのが、社会保険が完備されているかどうかです。
社会保険とは一般的に、健康保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険の4つを指します。
派遣社員にも社会保険に加入する義務があり、また派遣会社も加入させる義務があります。それは正社員と同様です。
ただし、期間の定めのない「無期雇用」の正社員と異なり、派遣社員の場合は期間の定めのある「有期雇用」であるため、
社会保険の加入につき、雇用期間についての条件を満たさなければならないなどの要件があります。
それについて触れておきましょう。
健康保険と厚生年金保険については、概ね2ヶ月を超える雇用契約があり、
1日または1週間の所定労働時間と1ヶ月の所定労働日数とが一般社員の4分の3以上であれば加入できます。
「一般社員の4分の3以上」というのが少々わかりにくいですが、一般的には週4日以上、30時間程度の勤務が目安とされています。
派遣社員も正社員と同様に、加入要件に該当すれば、仕事の契約期間中は加入する義務があります。
そして、仕事の契約期間が満了になると派遣会社との雇用関係も解消されるため、原則として、被保険者の資格が失われます。
ですが、いったん派遣期間が満了し、次の仕事につくまで間が空いてしまう場合でも、
条件次第で引き続き被保険者でいることもできる制度もありますので、その点は安心してください。
雇用保険の加入には、概ね31日以上の雇用が見込まれていて、1週間の所定労働時間が20時間以上という条件があります。
労災保険については、派遣会社が必ず加入し、保険料の全額を負担することが定められています。
たとえ仕事を始めて1日目だったとしても、勤務中や通勤途中に事故に遭った場合、補償を受けられます。
以上、少々細かい話になりましたが、
派遣社員もある程度まとまった期間、継続して仕事をするという前提があれば、社会保険のすべてに加入できることがおわかりいただけたかと思います。
どうぞ安心してください。
次に休暇について。
「派遣社員は、休みを取ったら欠勤扱いになって、その分収入が減っちゃうんでしょ」と思っているあなた。
それは違います。有給休暇も取得できます。
急な病気欠勤などでは有給休暇と認められない場合もありますが、
あらかじめ派遣会社と派遣先企業とに相談し、許可を取るなどの手続きを踏んでいれば、有給休暇はちゃんと認められます。
ただしそれには、同一の派遣会社から6ヶ月以上継続して勤務していること、
労働日の8割以上出勤していることという条件がありますので、注意してください。
また、有給休暇取得の手続きに関しては派遣会社によっても異なりますので、必ず事前に確認しておくことが大切です。
産前産後休暇、育児休暇の取得ももちろん、労働基準法によって派遣社員にも認められています。
最近は正社員同様、派遣社員の中にも、出産・育児を経て仕事に復帰し、ワーキングマザーとして仕事を続ける人が増えています。
なお、育児休暇に関してはやはり正社員同様、派遣社員の場合も男女どちらにも認められています。
よく質問を受けるのが、派遣社員でもクレジットカードを作れるのか、
あるいは住宅や車を購入する際にローンを組めるのか、ということです。
もちろん、どちらも可能です。実績もあります。
ただし、クレジットカード会社やローン会社によってそれぞれ審査基準が設けられていますので、その基準次第です。
勤続年数や年収などを基に審査されますが、派遣社員であるという理由だけで断られることはありません。
あくまでもその人本人がどんな働きかたをしてきたのかを見られますので、
一定以上の期間、きちんと継続して仕事をし、一定以上の収入があることが認められれば、
クレジットカードも作れますし、ローンも組めます。その点は、正社員であっても同じことです。
ここまでいろいろご説明してきましたが、いかがですか。
「正社員なら当然できることが、派遣社員だからできない」ということはほとんどないと思っていただいて間違いありません。
もしそういうイメージがあるとしたら、そのイメージは、誰かのまったくの思い込みによって作られてしまっただけのことです。
どうか安心して、派遣の仕事についていただきたいと思います。
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