どんな職場や仕事も、実際に自分でやってみなければ、向いているか本当のところはわかりません。
自分に向いた職場や仕事を見つけるためにも、派遣の仕事を始めてみることをおすすめしています。向いていないと思えば、契約期間が終わったところで、どんなところが向いていなかったか、次はどんな職場や仕事を試してみたいか、などの希望を派遣会社に伝えることができます。
そうした中で、自分にぴったりな職場や仕事と、運命の出会いをしてしまう人もあります。
派遣先からは「こんな人材がほしかった」と思われ、自分自身も「この職場、この仕事なら、ずっと続けたい」と思う場合です。
必ずしも全員ということではありませんが、派遣先と派遣社員、双方がお互いを気に入り、正社員登用が実現するということもあります。
第1章でご紹介したS.Kさんの場合は、まさにそういう例です。
派遣先企業の、「次世代を担ってくれる新しい人材がほしい」というニーズにぴったり合って、正社員として入社。
ついには取締役にまで昇っていくことになりました。
ただし、派遣先の会社にとっては、正社員登用にはそれだけ人材コストがかかりますから、欠員が出たとか、まえからちょうどそういう人材を求めていたなど、タイミングが合わないとなかなか難しいのが現状です。
派遣会社には、「紹介予定派遣」という制度を適用し、正社員や契約社員などを目指す人のための派遣を行っているところもあります。
正社員にこだわるなら、こうした制度を利用するという手もあります。
紹介予定派遣とは、まずは派遣会社に登録し、派遣社員として仕事を始めます。
この部分では、ほかの派遣社員と何ら変わりません。
ただし、派遣先企業が、最初から正社員や契約社員などの採用を、自社で希望しているところが違っています。
紹介予定派遣の場合の派遣期間は、最長6ヶ月と定められているのですが、派遣期間が満了になる前でも、そこで派遣先と派遣社員、双方の意志確認が行われます。
派遣先企業が「この人をうちで雇いたい」と言い、派遣社員も「この会社で正社員あるいは契約社員として仕事を続けたい」と言えば、交渉成立。
派遣期間が満了した暁には、正社員や契約社員として晴れて入社となるわけです。
この場合、最長6ヶ月の派遣期間は、いわばお見合い期間。働く側も、自分が入社する会社はここでいいのか、この仕事を続けたいのかを、自分で実際に確かめることができるという点が支持されています。
いずれの場合にしても、自分がある程度慣れた職場の慣れた仕事で正社員を続けていけるので、安心感はあるようです。
ただし一方で、先ほど挙げた菅田さんの例のように、それだけ派遣先の期待も大きく、仕事の責任も重くなります。
正社員登用した以上は、会社側にも主戦力となって働いてほしいという思惑が当然あります。
これまでもずっと触れてきましたが、派遣の仕事は、会社本位ではなく、仕事本位です。
しかし正社員になる以上、会社本位の考えかたや行動を求められる場面も当然出てきます。
慣れた職場の慣れた仕事だからと安心していると、会社とあなたとの間に齟齬が出てくる可能性もあるので、そこは注意が必要です。
給与体系なども正社員になると変わりますので、最初に会社側と交渉し、合意に達しておくことも大切です。
前にもお話ししましたが、派遣社員の場合は、その会社の給与体系や人事制度とは関わりなく、会社のニーズと一人ひとりの経験やスキルとが合致すれば高い収入を得ることができます。
ところが正社員になれば、当然のことながら入社する会社の給与体系や人事制度に縛られることになります。
その点もしっかり確認して、納得のいくまで検討しておくことを忘れないでください。
とはいえ、自分にぴったり合った職場や仕事と運命の出会いを果たすことは、なかなかないことだけにとても幸せな出来事だと思います。
派遣会社としては、大切な財産を連れて行かれてしまうわけで、少々残念な気持ちもあるのですが、当社で活躍してくれた人が仕事を通して幸せをつかんでくれるのなら、と、笑顔で送り出すことにしています。
Copyright © NFA.co.,LTD. All Rights Reserved.